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後遺障害等級認定

後遺障害とは、自賠法施行令2条によれば「傷害がなおったとき身体に存する傷害」を意味するとされています。
治療してもこれ以上良くはならず、病気や弊害が半永久的に続く状態を意味します。

医師に、「これ以上は、現代医学ではどうしょうもないですね。」とか「後は時間が解決してくれるのを待つしかないですね。」と言われたときには、後遺障害が残ったと思っていいでしょう。

もっとも、これら全ての後遺障害が、交通事故における後遺障害に該当するわけではありません。
交通事故における後遺障害に該当するためには、原則として損害保険料率算出機構において、後遺障害等級が認定されなければなりません。

もちろん後遺障害等級認定がされなくても、裁判所はその判断に拘束されませんので、後遺障害が認められる場合があります。
しかし、後遺障害等級認定は裁判所も尊重していますので、まずは後遺障害等級認定を取ることに力を入れてゆくことになります。

後遺障害等級には、別表第1の第1~2級と、別表第2の第1~14級が認められています。

それでは、具体的に後遺障害等級認定を行うためにはどうすればよいのでしょうか。

後遺障害等級認定の手続は、「損害保険料率算出機構」(損保料率機構) というところが行います。
この損保料率機構というのは、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき昭和23年に設立された損害保険料率算定会(損算会)から、昭和39年に自動車保険料率算定会 (自算会)が独立し、平成14年に、両会が統合して、現在の「損害保険料率算出機構」(損保料率機構)になったものです。
さらに、具体的な調査は、都道府県庁所在地等に「自賠責損害調査事務所」をおいて、同事務所に損害調査をさせています。

後遺障害等級認定を行う方法としては、いわゆる事前認定と被害者請求という方法があります。

被害者請求(16条請求)とは、被害者が、加害者の自賠責保険会社に対して、直接損害賠償額の請求をしてゆく方法です。
これに対し、事前認定とは、任意保険会社を通じて後遺障害等級認定を行う方法です。

保険会社から請求するのを「事前認定」という理由を説明します。

この場合、 任意保険会社は、自賠責保険分の支払も、 上澄みの任意保険分の支払も一括して任意保険会社が支払い、 後で自賠責保険分の支払分を自賠責保険に請求することになります。
この時、自賠責保険が認定する後遺障害がわからなければ、 後で自賠責保険が認定する後遺障害と任意保険会社が認定する後遺障害が食い違ったときに、 任意保険会社が自賠責保険より受け取ることができる金額が少なくなってしまう可能性があるからです。
そのために、 任意保険会社が被害者に一括で支払うよりも「事前に認定」してもらう手続を定めているのです。

被害者請求には、以下のようなメリットがあります。

被害者請求のメリット

1.事前にまとまったお金を受け取ることができる
2.提出した資料を自ら把握することができる
3.任意保険会社との後日の交渉が有利に展開できる
4.後で訴訟を起こす時、印紙代が安くなる
5.被害者の過失が大きい時には金額的に有利になる可能性がある( P参照)

1 事前にまとまったお金を受け取ることができる

被害者請求を行い、後遺障害等級が認定されたときは、その等級に応じて損害賠償額を受領することができます。この場合の損害賠償額は、左の図のとおりですが、一番軽い後遺障害である14級の場合でも75万円と規定されています。

そのため、被害者請求を行えば、最終的な示談を行う前に、ある程度まとまったお金を手にすることができるため、経済的な余裕が生まれることになります。

特に、任意保険会社から治療費の打ち切りや休業損害の支払いの打ち切りを行われた後には、被害者請求が必須となる場合もあります。
また、弁護士に依頼して訴訟を行おうと考えた際の弁護士費用や、訴訟提起の際に必要となる印紙代を用意することも可能となります。

そのため、経済的に逼迫しているようでしたら、被害者請求を行うことをおすすめします。

2 提出した資料を自ら把握することができる

事前認定の方法を用いて後遺障害等級認定が行われると、被害者としては、一体どのような資料が任意保険会社から損保料率機構に対して提出されたのかを通常知ることができなくなります。
これはあってはならないことですが、任意保険会社が後遺障害等級認定に必要な資料を提出し忘れていることがあります。

この場合には、再度必要な資料を添付したうえ異議申立を行わなければならなくなります。これでは、二度手間です。

また、任意保険会社から損保料率機構に資料を提出する際に、任意保険会社の顧問医の意見書が添付されることもあります。
この意見書で、本件の障害は交通事故によって生じた後遺障害ではない旨の意見が記されたりしたら、それだけ不利になります。

3 任意保険会社との後日の交渉が有利に展開できる

任意保険は、自賠責保険によってまかなわれない損害を填補するために存在します。
ということは、被害者と示談を締結する際に、自賠責保険額で示談が成立することになれば、任意保険会社は全く自腹を切らなくて良いことになります。

そのため、任意保険会社としては、「これが後遺障害分の賠償額になります。」などと言って、自賠責保険の範囲内で示談を成立させようと迫られたというような話を被害者が聞くことがあります。
私たち弁護士にこのようなセリフを言うことはありませんので真偽のほどはわかりませんが、あってはならないことです。

しかしながら、交通事故の被害者として相談に来る方の中には、自賠責保険と任意保険の区別がついていない方も大勢いらっしゃいます。
そのような方は、任意保険会社から上記のようなセリフを言われて、腑に落ちないながらも「保険金を受け取れるのだから…」として示談に応じてしまいかねません。

しかし、事前に被害者請求を行っておき、自賠責保険から損害賠償額を獲得しておけば、任意保険会社としても、後遺障害分で「0円」というような示談書は提示しにくいでしょう。
また、被害者請求を行っていれば、任意保険会社の担当者に、ある程度交通事故保険について知識がある、手強い相手であることを示せるでしょう。

4 後で訴訟を起こす時、印紙代が安くなる

訴訟を起こす時の印紙代は、訴訟で請求する額が大きくなればなるほど高額になっていきます。
したがって、被害者請求で事前にいくらかもらっておけば、訴訟の時に請求する金額が少なくなり、印紙代も節約できます。

事前認定のメリット

では、被害者請求ではなく、任意保険会社を通す事前認定のメリットを説明します。

1 手続が楽である。

事前認定は、任意保険会社が資料を収集し、不足資料は、指示をしてくれます。
そして、資料をまとめて後遺障害認定に出してくれます。

したがって、自分で全ての手続を行われなければならない被害者請求に比べて手続的に楽だというメリットがあります。

2 遅延損害金が多くなる。

保険会社との話がまとまらないときは、裁判になります。

裁判では、損害賠償金に対する事故日からの遅延損害金(年5%)を請求します。

ただし、この遅延損害金は、民法改正により、2020年4月1日以降に発生した交通事故については、年3%の割合で計算し、その後3年毎に率が見直されることとなっています。

この遅延損害金は、損害額が多ければ多いほど、多額になります。

しかし、被害者請求で事前にまとまったお金をもらっておくと、その分だけ総額が少なくなるので、遅延損害金も少なくなります。
この遅延損害金を狙って訴訟を引き延ばしたりするのはお勧めしませんが、最後の判決までいく場合には、一応のメリットとして説明しておきます。

被害者請求により、自賠責保険会社から後遺障害分として受け取れる金額
【自賠法別表第1】

等級 保険金額
第1級 4,000万円
第2級 3,000万円

【自賠法別表第2】

等級 保険金額
第1級 3,000万円
第2級 2,590万円
第3級 2,219万円
第4級 1,889万円
第5級 1,574万円
第6級 1,296万円
第7級 1,051万円
第8級 819万円
第9級 616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級 75万円
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