脊髄損傷で寝たきりになってしまいましたが、この場合、どの範囲の損害が損害賠償の対象となりますか?
脊髄損傷で寝たきりになった場合、遷延性意識障害と同様に自力での生存ができないことから、賠償の対象としては基本的には遷延性意識障害と共通します。
症状固定までのものとして、治療費、各種雑費、付添看護費(介護費用)、付添のための交通費、慰謝料、休業損害等が考えられます。症状固定後のものとして、慰謝料、逸失利益、将来的に入通院が必要な場合の治療費、施設あるいは自宅での介護費用、交通費、介護のための雑費、自宅や車両の改造費用等があげられます。
脊髄損傷で寝たきりになった場合には、意識はあっても、自力で四肢を動かせないので、他者に車椅子を押してもらったり、食べ物を口まで運んでもらったり、体を綺麗にしてもらう等の介護が不可欠です。残念ながら就労は期待できず、介護関係者に見守られながらの生活が生涯続くことが予想されます。
このような障害の特質上、逸失利益は完全な労働能力の喪失を前提とした計算が行われます。
慰謝料は、死亡していませんが、寝たきりの状態は死亡に比肩すると認定される可能性が高く、例えば配偶者、子、親に固有の慰謝料が発生すると考えることができます。
また、意識は有り自分自身で物事を判断できても、体を自力で動かせない以上、他者に見守られながら生涯を過ごさなければなりません。したがって、賠償の対象としては、将来的に発生が予想される部分の損害が他の後遺障害に比べて広範な範囲にわたっているといえます。
将来の部分は、どのような介護の体制をとるかにより、賠償の対象となる範囲、金額が変わってきます。
医療機関や介護施設での生活を送るのであれば、医療機関や施設の利用料、これに付随する雑費が賠償の対象と考えられます。ご家族等が病院に向かい、付き添うことが必要と認められれば、付添費用、病院に向かうために必要な交通費が賠償の対象と考えられます。
医療機関や介護施設ではなく、条件させ整えば自宅での介護が可能な場合には、自宅介護を前提として賠償の対象を検討することになります。専用のベッドや附属品等の生存に欠かせないものは、賠償の対象と考えられます。ご家族あるいは職業介護人を利用しての介護を行う場合には、介護体制に応じた介護費用が賠償の対象となります。
自宅での介護を前提とし、事故前の間取りや構造では介護に支障が生じる場合には、自宅改造費用が賠償の対象となります。場合によっては、エレベータの設置費用やこの保守管理費用まで賠償の対象とされることが考えられます。
また、排尿排泄を自力で行えないので、ストマや介護者が尿や便を処理するための手袋、衛星袋等も賠償の対象と考えられます。
被害者が自力で車に乗れないので、自宅介護を受けながら定期的に通院が必要とされる場合には、車両改造費用も賠償の対象となります。
これ以外にも、脊髄損傷した被害者が生存に必要なものに関しては、相当な範囲で賠償の対象と考えられます。